芸能界を電撃引退→8年ぶりに復帰。42歳になった成宮寛貴がにじませる“狂気とさわやかさ”
2016年、成宮寛貴が芸能界を引退した。それから8年、ABEMA SPECIALチャンネルで配信中のドラマ『死ぬほど愛して』(全8話が配信済み)で、俳優復帰した。
復帰作ではどんな役柄を演じているか。恐ろしいくらい研ぎ澄まされ、魅力的な殺人者役。視聴者誰もがその虜になってしまう。
その魅力の秘密は、現在の成宮寛貴が、明確に清濁あわせもつ俳優になったからだと思う。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
重々しい低音の声が響く。ところどころ、聞き取りづらい音があるが、その声が読み上げる内容を完璧に理解する必要はないのかもしれない。地響きのようなこの声にただじっと耳を傾けるだけでいい。
声の持ち主は、本作『死ぬほど愛して』で8年ぶりに俳優活動を復帰させた成宮寛貴である。低音による暗い声のトーンは、第1話冒頭場面の導入ナレーションとして、作品のダークな基調を決定づけている。
深い地底世界に潜り込み、時間をかけて地上世界までやっと響かせたという感じのその声。凄みがある。2016年に芸能界を引退した成宮寛貴にとって、これは復帰までの期間を滋味深く感じる絶好のカムバック作品だと思う。
実際、本作の成宮は、カムバック作品に相応しいグラデーションと厚みある存在感を画面いっぱいに行き渡らせている。成宮が演じるのは、劇薬のように怪しげな殺人者。
殺人者と野心的なビジネスマンである優しい夫というふたつの顔をもつ神城真人(成宮寛貴)は、洋菓子店に勤務する妻・澪(瀧本美織)と暮らしている。妻が作る朝食が並ぶ食卓を囲み、出社する夫を送り出す。一見、どこにでもいる幸せそうな夫婦である。
でも、真人が冒頭場面の暗く重い声色の人であることを忘れてはいけない。しかもこの夫婦には、前の夫から暴力を振るわれた澪が自殺しようとしていたところを間一髪、真人が救い、結婚した経緯があるのだ。
成宮寛貴にとって絶好のカムバック作品
劇薬のように怪しげな殺人者

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