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「新車を買うくらいの感覚」遥か遠い限界集落の“450万円物件”を購入→家族で移住した“その後”

 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。 「地方移住」と聞いて、皆さんはどんなイメージが浮かびますか? 「自然の中でゆったり暮らす」「時間にゆとりが生まれそう」などなど、素敵なスローライフが想像できる一方で、「縁もゆかりも無い地方で、本当に暮らしていけるの?」「移住にはお金がかかるのではないか?」そんな不安もあるはずです。
近藤さん一家

近藤さん一家

 本記事では、当時2歳の子を育てながら、石川県加賀市にあるわずか10世帯の限界集落「今立町」へと移住した近藤さん一家にお話を聞いています。  近藤さん一家は2023年に限界集落へと移住し、現在は限界集落で第二子を出産、子育てをしながら、家族で自然体験型の古民家宿「古民家ゆうなぎ」と乳幼児から小中学生向けの自然学校「かが杜の学び舎ゆうなぎ」の運営、地域コミュニティづくりに取り組んでいます。  前回の記事では、夫・裕佑さん、妻・なぎ沙さんの2人に、キャリアや移住決意の背景を聞きました。今回は、具体的な移住や古民家運営の準備について聞いていきます。 【特集】⇒限界集落で子どもを育てる

2年かけて進めた現実的な「移住準備」

古民家はリフォームの多くを近藤さんたちの手でおこなった

古民家はリフォームの多くを近藤さんたちの手でおこなった

 近藤さん一家の移住の準備の期間は、2年だったといいます。2年という時間は、当初の予定よりも時間がかかったとのこと。もっとも大変だったことや、具体的に何を準備していったのか聞きました。 裕佑さん「移住に2年かかったのは、僕の仕事の調整が難しかったのが理由です。僕は移住前は中学校の社会科教諭をしていましたが、教諭という仕事は、どうしても転職時期が限られるんです。 計画の1年目は、中学3年生のクラスを持っていました。気持ち的にも卒業まで見届けてから、移住を決行したいと思っていたので、当時は移住先を加賀市と決め、その子達の卒業と同時に自分も転職や移住をしたいと思っていました。しかし現実はそう上手くいかないもので、当時は転職先が決まらず、移住を決行できませんでした」  こうして、移住計画が2年目へ突入することになった近藤さん。そこから、どういった流れで、移住を決行できたのでしょう。 裕佑さん「計画2年目、2022年4月頃に今住んでいる家が空き家として売りに出ているのを見つけ、興味を持ち購入することにしたのが大きな転機でした。価格は450万円で、僕らの理想とする古民家でした。 6月には購入しようと夫婦で意見が一致しており、結局そこから購入、掃除、修繕と、2か月に1回くらい荷物を運び、最終的には、移住計画の2年目が終わる頃に、引っ越す準備は概ね整っていましたね。仕事がその時も決まっておらずでしたが、家もあるし『失業してもいいから、移住をしよう』となり退職しました」  職を持たずに移住するのは、なんとも不安が募りそうです。ただ1年計画を引き伸ばしたり家を購入したりしたことで、現地では知り合いができ、移住コーディネーター(移住希望者と地域の橋渡しの役割を担う相談役。移住推進のために自治体が配置)の方が、いろんな方と引き合わせてくれたのだそう。  最終的に、そのご縁から最初の就職も決まり、移住がスムーズにスタートできたと言います。

「山・川・海・雪」すべてを満たす場所を探して

川遊び 移住までは2年を要しましたが、移住の候補地選びは最初の数か月で決まっていたとのこと。ちなみに石川県加賀市は、近藤さん一家にとって、縁もゆかりも無い土地です。  田舎暮らしの経験がない筆者的には、場所選びは「インフラ以外にどんな観点があるのか?」と想像がつきにくい部分ではあります。近藤さんに、候補地選定の方法を具体的に教えていただきました。 裕佑さん「候補地の選定にあたって、僕たちは事前に“自然の4要素”を条件にして、探していました。 1.標高の高い山が近くにある 2.渓流魚がいるようなきれいな川がある 3.シュノーケリングができるきれいな海へアクセスできる 4.雪遊びができるほど雪が積もる地域である この4つを生活圏内で満たす場所を、Google Earthで探していきました。もともと千葉に住んでいたので、最初は千葉の海沿いから探しました。しかし、意外とこの条件をすべて満たす場所って少ないんです。 続いて関東近郊を見てみましたが、まず長野や群馬は海がないし、静岡は雪が降りません。さらに範囲を広げてみたものの、新潟は雪が降りすぎてしまうし、富山は平野部が多く、川遊びに適している場所が見つけられませんでした。さらに西側へとエリアを広げ、ようやくたどり着いたのが石川県加賀市でした」 雪遊びなぎ沙さん「今の住まいは川まで徒歩5分、海まで車で30分、雪も降るし近くには高い山があります。インフラ面でも、このエリアは新幹線へのアクセスも良く、また近隣の病院やスーパー、将来的な小学校通学も問題なさそうでした。限界集落とはいえ、自然豊かだけどアクセスの利便性が良い点は、最終的な決め手になったと思っています」
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古民家を450万円で購入。決断の裏にあった想い
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